「愛したけれど愛を信じはしなかった」わかるようでわからない『愛と、利と』の予告で流れたこの言葉、あなたは理解できましたか?
賛否両論あるみたいですが、私的には『愛と、利と』とってもよかったです。
『女神降臨』を見て以来、ムン・ガヨンさんを好きになりました。
韓国ドラマはこう見えて割と立て続けに見ているのですが、久々にぐっときましたので勝手に考察・思いを書き残しておきたいと思います。
また、このドラマにはよく見ていた女優、俳優さんたちが出ていたのも見ようと決めたきっかけです。
- 愛の不時着
- 気象庁の人々
- マイ・ディア・ミスター
- 賢い医師生活
- その口紅を塗らないで 等々から
※以下かなりネタバレあるので、まだ見ていない方は閲覧をお控えください。
考察
ふと、共感できる人は少ない?
主人公女性「ソヨン」は心の傷が深い人物。自分の気持ちをなかなか表に出せず、少し性格がツイストしたところもあり、この人物の心情理解するには、人によってはなかなか難しいものがあるのではないかと思いました。サンスと2回目のデートのとき、彼の迷う姿を見て、なにかと根に持っていたスヨン。プライドが傷ついたのか、なんでしょうか?
でも実はわかる気がします、「そんな程度の”好き”なんだ」と。
なぜサンスはスヨンが好き?
サンスは才色兼備なミギョンととってもお似合いでした。もしミギョンが富裕層でなければ、うまくいっていたのでしょうか?正直、なぜサンスはそんなにスヨンが好きだったのでしょうか?スヨンには彼氏(ジョンヒョン)ができ、サンスは一時はミギョンと付き合いましたが、傷いても傷つけられてもスヨンのことが好きなサンス。そしてサンスに冷たく振る舞うスヨン。私が男だったら好きな人だとしても辛くて諦めたくなると思います。
ですが、サンスはそういうスヨンをなんとなく理解できて、そういうところまで愛するようになっていたのかもしれません。
思うのはのは、サンスにとって、スヨンは入社当時から頼りになる存在であり、立場が弱いなりにも怖気ることがない(職場では)というところを好きになっていったのだと思います。また傷の深いスヨンとは知らずに、物事が思うようにいかないスヨンに対して”いつも気になる存在”というふうにもなっていったのかな?と。ですがもちろんスヨンはヨンポ支店の女神と言われるだけの外見の美しさも兼ね備えています。
サンスはドラマ前半で、スヨンの「断らないところが好き(職場で)」とギョンピルとの会話で述べています。また、「大変な時こそ何気なくふるまうところが自分に似ていて、応援したくなる」と。
ドラマ後半では、「いつもの自分では通用しない、この状況が不安で息苦しい、でもそれでも構わない」と語り、それくらい愛していると伺えます。
スヨンの気持ち
一方でスヨンは、なんでこんな自分を好きなのか。また、スヨンは学歴・家族のことなどから自分を惨めに思うこともあり、そういう自分は好きになる資格はない、釣り合わない、などと最初は思っていました。本当の気持ちとえば「サンスに一目惚れした」とドラマの後半で言っています。
うまくは言えないですが、心の傷によって自分の深みに行くことを恐れ、同じような痛みを知るサンスを好きになることでが自分の深みに触れていることを感じ始め、スヨンはサンスを避けていたように思います。サンスの会議室の言動で傷ついてしまう場面もありました。好きな人の裏切りの言葉は、どんな言葉よりも傷つきますよね。
スヨンはなかなか素直になれず、近づけられないでいました。ですが、気持ちに嘘はつけない。気持ちは言動とは裏腹に・・・
その後自分の気持ちに素直になろうとしたものの、スヨンは利害で苦しむことになります。
最終話では、スヨンのカフェにたくさんのサンスとの思い出が飾られていました。そこにはスヨンのサンスへの当時の思いが明確に表れていましたね。
対比
ジョンヒョンといるときのスヨンは、自分の深い傷を見せることなく付き合えていたのかもしれません。本当の自分に蓋をするような感覚、私からすると辛いひと時を忘れさせてくれる、気を紛らわせてくれる、でも少し気休めの関係に見えることも…状況的にはジョンヒョンもなかなか大変。純粋なジョンヒョンを放っておけないスヨンは彼に対してとても優しかったです。別れる時は嘘まで付いて彼を傷つける必要はあったのでしょうか?
スヨンの深みには行けなかった・・・そこはサンスとの違いではないでしょうか。彼にはスヨンを支えるような器はなかったからなのか、サンスは自立していましたし、スヨンを支えようと思えばできると思います。ジョンヒョンはまだまだ勉強する身で、経験もこれから積んでいくような年。
付き合う人、付き合わない人、何が違うのでしょうか。
もし、変な疑問を投げかけていたらすみません。
もし立場がみんな同じだとしたら?
好きとは何でしょうか?
これこそ『愛と利』なのか。
私たち人間は生まれ、利害に巻き込まれながら生きていきます。そして色んな経験を通して愛を学んでいきます。
スヨンとジョンヒョンとの関係、別れた後の方がずっしりくるものがありました。そしてサンスとミギョンも。誰かを不幸にしてある幸せがあるのか、と。
友情
スヨンとミギョンはほぼ真逆の立場、性格でした。二人の掛け合いは良いときも悪いときも見物でした。
あとあと二人の間にも友としての愛があった関係だったんだとお互い気づきます。
インタビュー
出演者のインタビューです。ドラマや役に対する思い、考えなど、参考になると思います。
ムン・ガヨンさん
ムン・ガヨンさんの目にはいつも吸い込まれていくようでした。とても綺麗でした。
インタビューで今回のキャラクターの納得できる部分がありました。
- 「スヨンは愛に対して不安があります」
- 「スヨンの選択を利己的で、自分を傷つけるものだと見ることもできますが、スヨンは自分が置かれた環境で最善の選択をしたと思います。スヨンに近づくサンスの行動も勇気がいることですが、目の前のことをあきらめ退くスヨンも勇気ある選択をしました」
- 「スヨンはすでにあまりにも多くの傷を受けており、もう傷つきたくなかった。自分がサンスが好きで、そのしばらくの浮き上がりでも不安を感じるので、彼の躊躇に戻るしかなかったのです」
- 「多くの傷を持つスヨンはサンスを愛する前に、自分をまず最優先することが必要だったようです」
- ドラマ最終回で「スヨンも過去の選択を少しは後悔したようです。」「しかし、この後悔も4年という時間が経って自分の人生が少しは安定したからできる話」と話した。
クム・セロクさん
サンスの恋人役『ミギョン』を演じた、クム・セロクさんのインタビュー。
視聴者の間ではパク・ミギョンが「愛と、利と」の主人公の中で最もノーマルだという反応もあった中、これに対して「すべての人物がそれぞれの傷と自責の念を持っています。誰が正常で誰が正常でないというよりは、私はこのドラマが秘密の日記のような感じだと思いました。普通、日記帳に隠したい気持ちや傷をあまり書かない時もあるじゃないですか。それを残したくないから」とし「そのようなことをすべて赤裸々に書いておいた感じでした。4人の日記帳を全部開いた感じでした。美しい愛の物語として表現されるよりは、それぞれの悩みと傷が一つずつ明らかになっていくので、じれったく感じられたと思います。」と伝えた。
演技
ムン・ガヨンさんのナチュラルな演技、ユ・ヨンソクさんの上手な演技、本当に素敵でした。ユ・ヨンソクさんの酔ったシーンは本当に顔色から含めて酔っているようでしたね。あと、ちょっとした表情、喋らなくても表情で表せることができるのには圧倒させられました。
ムン・ガヨンさんは良い意味で作りこんでいない、自然な演技が魅力的でした。冷酷なときもそうですが、ちょっとした表情も儚くて美しくていつも引き込まれました。また、特に感情の入るシーンは本当に役に入り込んでいて感動しました。
クム・セロクさんの自信たっぷりでいつも何となくハニカミながら話すところ、とても印象深いです。
ドラマから考えさせられること
人を愛するということ
このドラマでは「愛するとは何か」ということを考えさせてくれたと思います。そして、人を愛することで、人は成長するということ。愛する人をを愛するということは、自分自身も愛するということ。
心の傷は表面からではなかなか見えませんよね。昔に愛する弟を亡くし、深く傷ついたついたソヨンの心は、臆病になり、もうこれ以上傷つきたくないというのが本当に伝わりました。愛する人を何度も失うなんて生きている上でそれ以上に辛いことはないと思います。そしてサンス自身も愛するということは責任がいる、と。またスヨンの「あやふやな関係はいや」という言葉を聞いてと、最初は迷ったこともありましたね。いや、ですが後に彼はすごく行動力を発揮してました、スヨンが逃げてたばかりなだけで。彼は本当に行動することで愛を表現していたと思います。スヨンに関しては時間が必要だったのだと思います。ですが、恋が実らなかった間も、そこには愛があったんだと後にソヨンは言っています。とても切ないです。
人間に必要な成長
スヨンは4年後にはこういった行動を後悔しているわけですが、そう言えるのも時が過ぎたからですよね。
「あのとき、ああしとけば・・・」ということはよくあります。
スヨンは自分自身がこれ以上傷ついてしまったら自分はどうにかなってしまう、自分の傷に触れられたくない、そういう面持ちがあったと思います。ですが、そういう思いとは裏腹に人生にはいろいろなことが起こっていきます。
「受け入れたいのに受け入れられない、進みたいのに進めない」…そのときは傷つきそうで、怖くて。
気持ちとは裏腹に思考が拒否をしてしまう。仕方ないのでしょうか?
やはり人それぞれのタイミングなんでしょうか・・・その時にはそうするしかなかった。
後悔したことも受け止め、そこは前に進んでいきたいですよね。
ドラマ内では、サンスの成長をとても感じました。ミギョンとの関係も経て、最後に行くにつれてとても頼もしくなった気がします。
人と比べてしまうこと
ドラマでは仕事の階級、お金などで人と比べることを表現していました。現実でもそうかもしれませんが、本当の愛にはそれは必要ない、とは言いたいものの・・・最後スヨンは銀行のVIPにもなり、社会的地位もあげ、サンスとの関係もよくなったように思えます。ただきれいごとでは終わらないのがこのドラマでした。ですがそこにはスヨンらしい、自分自身で責任を持つという性格が出ていたのだと思います。
好きなシーン・台詞
- サンスが振られるシーン
サンスの表情がいつもたまらなかったです。(サンスごめんなさい!)
- サンスの母からの言葉「デートして、恋愛して、結婚しなさい。したければ離婚もしなさい」
一周回ってふと、懐に入る言葉。サンスの母親からは、よく印象的な言葉を聞きました。
- サンスとギョンピルの会話でのギョンピルからの言葉「買い物する時はレビューを気にするくせに”愛”になると純粋ぶって、あたかも計算してないように振る舞って、正直に考えを言えば悪者扱いされる」
リアルです。。。
- ソッキョンの結婚式での二人の思いと一緒に、見つめ合うシーン
両想いなのに素直になれない二人、とってもうずうずしました・・・
- スヨンがお騒がせなソッキョンに対して、「結局結婚するくせに」と冷たく言い放つシーン
スヨンの冷め具合が良いです(笑)
- スヨンがジョンヒョンにお金を渡すシーン「誰かには簡単で、私たちには難しい、私たちには絶望的で、誰かには些細なことだなんて腹が立つ」
本当その通りですよね。
- スケートリンクでのキスシーン
熱いキスしたくなりませんでした?
- スヨンとサンスの嘘を言い合うゲーム
変なシチュエーションでしたが、スヨンは思いを少し伝えられてよかったです。
- スヨンが海辺で砂の城について「頑張ったから壊されてしまわないか心配になる」「自分で壊したの、気が楽でしょ」
独りよがりでひどいように聞こえますが、スヨンの傷だらけの心が目に見えました。自分で責任をもちたい、他人に振り回されたくない、期待したくない、そういう考え方には共感してしまいました。
- スヨンが母親と食堂にいるシーン「疲れたの、疲れちゃった、お水をくれる?」
ここでは涙が・・・ドラマとはわかっていても、ムン・ガヨンの圧巻の演技。全部疲れちゃったんだよ!
- ジョンヒョンへの笑顔、そして敬礼
言葉になりませんでした。とても辛い。純粋なジョンヒョンを見る度に胸が痛みました。
- 最終回、二人の”たられば”のシーン
胸がずっと苦しかったです。
おまけ
とある共通点
ドラマを見終わったあとに、なんと撮影チームが『マイ・ディア・ミスター』と同じスタッフだと知って、とても驚きました!
音楽の入る瞬間とか、ところどころの”間”とかなんですかね、なんだか似てるな…と思っていました。ミギョンが学生時代に好きなことが「走ること」だったときはかなり頭によぎっていたので本当に驚きました。
また、今回の支店長役の方をまた見ることができたことも嬉しかったですね。。。(笑)
句
ドラマ中で紹介された『花様年華』の一節が美しかったのでここに書いておきたいと思います。
「愛情とは別の理由で愛をためらうあなたへ、ためらっているうちに最も輝く瞬間を逃してしまうかもしれません。」
苦しい瞬間だ、女はうつむいて男に機会を与えるが、男は近づく勇気が出ず女は去ってしまう。時が過ぎ、あの頃の名残はもうない。過ぎた月日は埃だらけの窓ガラス越しに見えるだけで決して触れない。あの頃が恋しい、窓ガラスを割ってあの頃に戻りたい。
ドラマとは直接関係ないですが、あることを思い出しました。キルメン・ウリベ著、『ムシェ:小さな英雄の物語』からの抜粋
中国の古い詩によれば、二人の人間が激しく愛し合い、あまりに強い結びつきが生まれると、そのどちらかが死んでしまったとき、本当に死んでしまったのは、その後も歩き続けている方なのだという。
スヨンの気持ちを思って…
おわりに
私はスヨンの素直になれない性格、実は共感できました。そして自分としてはそれでも最善をつくしているつもりなんです・・・そして最終回での”たられば”シーン。とってもとっても切なかったです!
できれば後悔しないように生きていきたいですね。。。
韓国では、展開が遅すぎる、イライラする、サンスがストーカーみたいだとか色々言われてたみたいですが、このドラマは上辺でいろいろ事件が起こるものではなく、人間の心情を深く描いていて、今までにない面白さがあると思いました。リアリティーがありました。
このドラマを見終わったあとは、本当にいろいろと考えたくなりました。出演者共に、脚本・映像とても素晴らしかったです☆
ムン・ガヨンさんは幼少期から演技をはじめ、今に至るまで決して平たんな道ではなかった、と「いつもあきらめずに疲れないでやっていると、他のルートを通じてでも常に開かれ希望はうまれる」という彼女の言葉をどこかで聞いて以来いつも応援したくなります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
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